独占欲強めな同期の極甘な求愛

押し問答しているうちに、不本意にも駅へ着いてしまった。何度も撒こうと走ったけどその度に追いつかれ今に至る。身も心もタフな人だ。

「こんな時間でもこの人の多さはどういうことだよー」

ぞろぞろと蟻の行列のように改札を抜ける中、三井さんがうんざりした様子で言う。普段は車通勤だという三井さんにとっては窮屈な世界なのだろう。

ホームへと着くと、三井さんは疲れた様子で列の最後尾に並ぶ。私も少し距離をあけ、その後についた。

「白鳥美麗ってどんな子だった?」

イヤホンをつけようとスマホを取り出したところに、どこからともなく私の名前が聞こえてきて、その手が止まる。三井さんもその声が聞こえたのか首を僅かに動かし、その声の主を探しているようだった。

「朝見てきたんだけど、地味な感じの子だったよー」
「なーんだ。じゃあそれ絶対違うでしょ」

弾む会話の声を辿ると、少し先に二人組の女性が楽しげにおしゃべりをしていた。名前はわからないが恐らく企画部の子たちだ。


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