独占欲強めな同期の極甘な求愛

「あの?」

俯いていると、花笑ちゃんがそっと覗き込んできた。

「あ、すみません。都倉さんとは別に友達でもなんでもないですよ」

言いながら胸が苦しくなる。本当は物心ついたときから知っているし、20年近く彼に背中を追いかけている。だけどそれすら公言できないのが悲しい。臣にとって私は恥ずかしい存在なんだって、嫌でも実感してしまうから。

「そうなんですね」

花笑ちゃんは少しホッとしたような口調で言う。

「あの、お名前伺っても?」
「え? 私ですか? 白鳥です。白鳥美麗」
「白鳥さん? 綺麗なお名前ですね。私、小倉花笑です。たまにこちらの会社へ打ち合わせに来させてもらってます。どうぞよろしくお願いします」
「あ、はい、こちらこそ」

慌てて頭を下げる私に、花笑ちゃんはニコリと微笑んでその場を立ち去って行った。だけどなにを思ったのか、花笑ちゃんはすぐ振り返り、

「白鳥さんコンタクトにしたんですね。そっちのほうが素敵です」

洞察力のすごさを披露していった。

なんていうか、可愛い顔とは裏腹に、さっぱりとした人だ。しかも私の名前を聞いても笑わなかった。むしろ褒めてくれた。もしかして良い子? 

顔よし、センスよし、極めつけに性格までよし。臣が夢中になるのもわかる。きっと彼女はお嫁さん候補だろう。マウンティングの最上位同士がくっつくのは自然の摂理だ。結婚報告もそう遠くないかもしれない。笑顔でおめでとうって言える練習しておかないと……。

なんて、聞き分けのいい幼馴染を演じながら一人どんよりと落ち込んだ。

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