独占欲強めな同期の極甘な求愛
「だって、なに? 気になるじゃん」
覗き込みながら聞いてみるも、臣は顔をそむける。
「おーみー。どうしたの?」
「やっぱりいいや。ちょっと聞いてみただけ」
「えー! もー、なにそれ」
いったいなんなの? まさかおちょくってる? 何を詰めようか悩んでいたというのに。許せん。
「もう、臣は向こう行ってて」
シッシと手で払う素振りをするも、どういうわけか臣は私の側を離れようとしない。いつもならさっさとリビングに行ってテレビを見始めるのに、今日は食器を洗う私の隣で、何をするわけでもなく突っ立っている。
「美麗さ、今日髪型違くない?」
「え? あー、伸びてきたからクリップでとめてるだけだよ」
そう言うと、臣は上からふーんと眺めている。
そろそろ美容室に行かなきゃな、なんて思っていたところだった。行きつけのお店を変えたり、帰り道を変えたり、そういう変化が苦手な私は、いつも同じ担当者で同じ髪型をオーダーする。
お店の人も最初はパーマやカラーリングなどあれこれ提案してきた。だけど頑なに受け入れない私に最近は諦めている。というか、呆れていると言った方がいいかもしれない。色んな人に固くて頑固な人間だと思われているだけかもしれないけど、私はただ変える勇気がないだけ。そう、私は臆病者なんだ。
「美麗の髪ってさ、綺麗だよな」
「ひゃっ」
不意に臣が触れてきた小さく悲鳴が上がる。だけどそれでも臣は私の髪を撫でるように触れる。拒否ろうにも、手が泡だらけで払うことすらできない。