明日こそ、キミに「好き」を届けます。
「……篠山、今日の返事、できたら明日聞かせて」
膝を手で払いながら、桜庭はその場に立ち上がる。
「えっ。今日じゃ、ダメなの?」
「うん。ダメ。やだ」
「……わがままなサルだね」
「……るさい」
普段は私がからかわれる側なのに、今日だけは立場が逆転する。
「あ、というかそろそろ手離してくれない?」
「なんで!やだ!」
……なんか急に反抗期に入ってませんか?桜庭。
いつものお調子者はどこにいったの?
「手袋外したいの」
「……やだ。あ、ちょっ……!」
なんとか隙をついた私は、桜庭の手から逃れると、左手だけ手袋を外した。
そして……、緊張で震えた手で桜庭の冷えた右手をギュッと包みこむ。
「……こっちのほうが、すぐに温かくなるでしょ……」
「……っ」
マフラーに顔を埋めながら、私は桜庭とは反対のほうを向く。
冬の冷たい空気で、私の身体はどんどん冷えていたけど、繋がれた左手はいつまでも温かいままだった。
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『明日こそ、キミに「好き」を届けます。』
fin.。