イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
必死で痛みを堪えて名前を呼び、私、午後から用事があるんだ…と言い出した。


「さっき忘れてて。ごめんだけど、先に店を出てもいい?」


二時半からなんだ…と壁の時計を見て言うと、彼は同じ様に壁掛け時計を見つめ、自分も出ようと席を立ち始める。


「あっ、今泉君はゆっくりコーヒー飲んでていいから。私は先行くね」


ご馳走様、と言って慌てて席を立った。
ポカンとする彼を置いて店外に飛び出し、壁際を進んで、イタタ…とお腹を押さえてしゃがみ込む。


(……良かった。こんな姿を見せずに済んで)


とにかく早く立ち上がって水を買って薬を飲もうと決めたのはいい。
だけど、立ち上がろうにも胃が痛くて腹筋が伸ばせず、痛みは更にぎゅうっと襲ってくる。


(痛っ…)


これはまた完全に胃痙攣だ…と気付いても対処のしようが無い。
早く動かないと今泉君も出てきてしまうと思うと、こんな所で座り込んでる訳にはいかないんだが。


(あーもう、情けない)


しっかりしろ、と自分の胃にムチが打ちたい。
だけど、ムチで打ったら確実に痛みが増すだろうし、これ以上痛みが増すのはもう勘弁。


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