セカンド レディー
「2つ目は桐谷のことだ」
理解が追いつかないうちに流牙くんは話を進める。
「柚姫と桐谷が出会ったのは1年程前、だったよな?」
何かを確かめるように訊ねられ、「うん」と小さく頷く。
「桐谷はもともと、"桃華(とうか)"という族の人間だ。桃華は、たった5人にして最強の天下無敵の族と呼ばれていた。俺たちは確かに最強の暴走族。けどな、正確に言うと"最強と呼ばれた族の1つ"だったんだ、1年前までは……」
1年前、蓮がいなくなった日にみんなが関係している。あるいは、何かを知っている。そんなもの言いだった。
「俺たちを潰そうとする族はいくつもある。けど、"たった5人"それだけで、桃華が狙われることの方が圧倒的に多かった。
そして1年前、天下無敵と呼ばれた族がたった一夜にして潰された。相手は敵対関係に値している族。俺たちはその抗争に参加してないから詳しい状況は分からない。ただ、桐谷はその抗争のせいで、数ヶ月入院したと聞いている」
あたしが知らなかったこと。
蓮から聞かされていなかったこと。
『…コトが終わったら全部話すから』
この言葉の意味が、その戦いだとしたら?
ずっと待ち続けていた間、蓮も苦しんでいたの……?
蓮に捨てられたんじゃない。
あたしが、蓮を捨てたんだ……。