恋しくば

当の本人はあまり気にしていないらしく、テーブルに乱雑に広げられた資料を読んでいる。

「葛野はどうして勉強ができるんだ?」
「え、今のあたしの状況分かってる?」
「試験はいつも一番だろ」

手が止まる。何故それを、というか、誰からそれを。
少し笑う気配に、カマをかけられたことに気付く。

「……点数取らないと特待になれないからね」
「そうか」
「辻本だって分かってるでしょ。あたし貧乏だから、全額免除くらいじゃないと大学行けないんだよ」

ぷつんと糸が切れたみたいに、開き直れた。あたしの部屋があのボロアパートだということも、辻本は知っている。

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