恋しくば
辻本京平という男

大学内のカフェで一番安いコーヒーを飲んで空きコマを潰していると、テーブルに静かに手が置かれた。それを見上げれば、見慣れた顔。

「ここ良いか?」
「どうぞ」

既に注文したカップを置いて、辻本は前の席に座る。あの新歓からもう一年は経ったのか、とふと思い出す。
にしても、こんなにカフェが似合う男は居ないよな、と思う。和食も似合うのに、白シャツとコーヒーが似合うって一体何者なんだ。

「これからバイト?」
「ああ、相手は中学生」
「中学生から告白とかされないの? その親からも想いを寄せられそう」

微妙そうな顔をする。あながち間違いでもないらしい。

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