強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました。(番外編)



 この日、四季組の4人は温泉旅館に泊まりに来ていた。結婚式をあげた後も、すぐに新婚旅行に行けない秋文と千春のために、人気のある旅館を前々から予約していてくれたのだった。
 この日だけは絶対に空けておいてと言われて、今日まで行くところも告げらせずにサプライズで旅行をプレゼントしてくれたのだ。

 新婚旅行にすぐに行けなかったのは、千春自身も仕方がないことだと思っていたけれど、やはり本音では残念でもあった。

 その気持ちを言わなくても理解してくれる2人の親友の思いやりが、千春は嬉しかった。
 秋文も口ではあんな風に強がりを言っているけれど、本当は喜んでいると千春はわかっていた。

 
 「それにしても、千春のドレス姿は綺麗だったねぇー。」
 「ありがとう。でも、それ3か月も前の事だよー。」
 「でも、本当に綺麗だったよ。」
 「ありがとう、出。」


 千春は、ウエディングドレスを選ぶのをきっと悩んでしまうだろうと思っていた。
 けれど、千春がこんなのが着たいなぁーと言ったのを秋文が覚えていてくれ、試着をしにお店に行くと、「これがいいんじゃないか?」と秋文が選んだ物に決まった。
 そのドレスの後に何着か試着をしたけれど、秋文が選んだ物に勝るものはなかったのだ。
 
 千春の好みや、似合うものを彼はわかっていてくれるのだと、改めて実感した瞬間だった。


 「秋文も白タキシード着るって聞いた時はビックリしたけど。悔しいけど、似合ってたよ。」
 「当たり前だろ。現役でモデル業もやってるんだぞ。」


 秋文が得意気に言いながら、お刺身をつまむ。立夏が悔しそうにしているけれど、反論は出来ないようだった。

 白いタキシードは、本当によく似合っていた。王子様という雰囲気ではないが、黒髪に少し焼けた肌、そして真っ黒な瞳とは正反対な白が彼の魅力をより引き立ててくれていたのだ。


 千春は横に座る秋文をちらりと見た。
 今日は白いタキシードとは全く違う、浴衣姿だった。昼過ぎに到着した四季組のメンバーは、すぐに温泉に入ったのだ。
 部屋に料理を運んでくれるというので、4人は浴衣のまま寛いで過ごしていた。

 秋文は少し暑かったのか、胸元を大きく開けて浴衣を着ていた。温泉か、お酒のせいなのか、肌もほんのり赤い。
 汗ばんだ肌と、浴衣を着ているためなのか、いつもより色気が増しているような気がして、千春はドキッとしてしまう。


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