偽りの甘い罠
時間
雅人さんと会うときは、常に厳戒態勢だ。

雅人さんの車に乗って、もちろんバレないように
後部座席に、、、

それは私の切ない時間でもある。

雅人さんの運転中の横顔もハンドルを回す手も
隣で見ることは叶わない

後ろから時折、バックミラー越しに目が合うだけ

ほんの一瞬に頬を染める


「紗英、なに食べたい?」

ミラーを通して、私の反応を待つ。
その目の動きさえも私の鼓動を激しく揺らすんだ

「私、ラーメンが食べたい。雅人さんと一度行った
あの、豚骨スープ美味しかった」
「そんなんでいいの?あれは、時間なくて行った
ラーメン屋さんだろう?」
「いいの。雅人さんとなら、ラーメンだってご馳走
だもの。」
「紗英は可愛いな。」

雅人さん、知ってる?

女はね、好きな人に可愛いって言われるとドキドキ
するんだよ?

その度にもっと可愛くなろう、可愛くしなきゃって
頑張るんだよ?

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