小さな傷
「お父様、お話があるの。」
夕食のあと、ソファで葉巻を燻らしながら新聞を読んでいる父に話しかけた。
「ん?なんだい、深刻な顔をして…何か悩み事か?」
そう言うと父は私に向かいのソファにかけるよう促し、葉巻を灰皿で消した。
「実は…。」
「……。」
「実は…す、好きな人ができたの。」
先程まで柔和な顔をしていた父の眉間にくっきりとシワが寄った。
そして、先程消した葉巻を再び手に取り、少し震える手で火を付けた。
ふぅ。
煙を思い切り吐き出すと、わざと落ち着いたような素振りでソファにもたれかかり
「で、相手はどんな男性なんだ。」
明らかに怒っているとは感じたが、乗りかかった船、思い切って銀次さんのことを話した。
「ほう、米軍基地で働いている。」
「はい、仕事もきちんとする方です。それに英語も堪能で、スマートな紳士です。」
少し関心を持ってくれたみたいだったので、一気に畳み掛けた。
「ダメだ。」
「え?」
「ダメだ。おまえの婿は私が決めると言ったはずだ。」
「お父様、私!」
「ダメなものはダメだ!…もう休む…。」
部屋に帰り泣いた。
ベッドに顔を伏せ、声を殺して泣きはらした。
いつのまにか夜が明けていた。
鏡で見ると目が腫れて酷いことになっていた。
それでも、今日は仕事を休むわけにはいかなかったため、顔を洗い化粧を整え、何とか出勤した。
仕事からの帰り道、独り歩きながら考えた。
お父様は恐らくどんな男性であっても、私が選んだ人はすべてNOと答えるだろう。
そして自分が選んできた男性を私と結婚させ、自らの後継者にしようと考えているのだろう。
私は…
「お父様の人形じゃない!」
そう叫ぶと銀座の街を駆け出していた。
夕食のあと、ソファで葉巻を燻らしながら新聞を読んでいる父に話しかけた。
「ん?なんだい、深刻な顔をして…何か悩み事か?」
そう言うと父は私に向かいのソファにかけるよう促し、葉巻を灰皿で消した。
「実は…。」
「……。」
「実は…す、好きな人ができたの。」
先程まで柔和な顔をしていた父の眉間にくっきりとシワが寄った。
そして、先程消した葉巻を再び手に取り、少し震える手で火を付けた。
ふぅ。
煙を思い切り吐き出すと、わざと落ち着いたような素振りでソファにもたれかかり
「で、相手はどんな男性なんだ。」
明らかに怒っているとは感じたが、乗りかかった船、思い切って銀次さんのことを話した。
「ほう、米軍基地で働いている。」
「はい、仕事もきちんとする方です。それに英語も堪能で、スマートな紳士です。」
少し関心を持ってくれたみたいだったので、一気に畳み掛けた。
「ダメだ。」
「え?」
「ダメだ。おまえの婿は私が決めると言ったはずだ。」
「お父様、私!」
「ダメなものはダメだ!…もう休む…。」
部屋に帰り泣いた。
ベッドに顔を伏せ、声を殺して泣きはらした。
いつのまにか夜が明けていた。
鏡で見ると目が腫れて酷いことになっていた。
それでも、今日は仕事を休むわけにはいかなかったため、顔を洗い化粧を整え、何とか出勤した。
仕事からの帰り道、独り歩きながら考えた。
お父様は恐らくどんな男性であっても、私が選んだ人はすべてNOと答えるだろう。
そして自分が選んできた男性を私と結婚させ、自らの後継者にしようと考えているのだろう。
私は…
「お父様の人形じゃない!」
そう叫ぶと銀座の街を駆け出していた。