流星の彼女に愛の花束を
さよなら好きな人。
愛も伝えられぬまま。


「ごめんな星屑、いい奴に拾われろよ。」
そう言って涼は私を芝生の上に置いた。
「じゃあな。」
脇目も振らず、タッタとかけて行ってしまう。
えっ、ちょ、待ってよ。待ってよー、りょー。
急いで追いかけようとするけど、こんな小さな子犬の足では到底追いつけそうにない。
「痛っ」
足がもつれて転んでしまった。
もうやだぁ、涙が出てくる。車の音も、子供の笑い声も、こんな怖いの初めてだよ。
涼、りょー、どこ行っちゃったの?
昨日まで可愛がってくれてたのに。なんでいきなり私をひとりぼっちにするの?涼、助けてよ。
いつのまにか足に擦り傷ができている。
どうってことないのに、なんだか凄く痛い気がしてくる。
ウッウッウッウッ。
泣きながら歩く。冬の暮れは早いって言うけど、その通りだ。もうお日様があんなに低いよ。
それから、凄く寒い。
ウッウッウッウッ。涼ー、涼ー。
涼、今ならまだ冗談だよごめんね、の一言で許してあげる。だから私を迎えに来てよ。
そろそろ私の事が恋しくなる頃じゃない?
そう思って立ち止まってみる。でも涼は来ない。どこからか聞こえる足音が、近づいたり遠ざかったりしてるだけ。
暗くなって、家からは温かい光が漏れ始める。
どうしよう私、一人ぼっちだよ。
もう足は疲れて動かないし、いろんなとこ走ったから傷だらけだよ。
私の人生これで終わり?早いよ。
急に眠くなって目を閉じる。きっとこのまま寝たら体温が下がって死んじゃう。分かってるけど、でも子犬だもん。仕方ないよね。
私本当は星屑じゃなくて、星になりたかったな。
死にたくないな。ま…。
睡魔に勝てなくて、私は道のど真ん中で眠ってしまった。


なんだか、温かい音がする気がする。
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