不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
最近、豪がよく食事に誘ってくれる。
最初は反故になってしまった映画と食事の埋め合わせかと思ったけれど、その後もちょくちょく仕事後に誘われるのだ。
ラーメンを食べに行ったり、居酒屋で軽く一杯飲んで帰ったりと、気合の入ったデートみたいな感じはまったくなく、同僚とのごはん感はあるんだけど、それでも以前の私と豪にはなかったことだ。

「私たちの今までの関係を考えると、食事とかそういうのってふたりきりで行くものじゃなかったのよ。だから、なんていうか……豪の気持ち?うん、何考えてるのかなーって思っただけよ」

祭が何かきいていれば、と思ったけれど、そういう感じはなさそうだ。男同士はあまりそういう話はしないのかもしれない。それとも、豪にとってはそれほどたいしたことじゃないのかしら。

「豪は豪で考えてるんでしょ?翠との将来を。いつまでも子どもっぽく喧嘩してないで、未来の奥さんとして尊重し大事に扱おうって思ってるんじゃないの?」
「あの豪が?」

意地悪で性格きつくて、基本的に私に興味のない豪が?
確かに風間さんの一件といい、自分に他の女性の影がないことは主張してくる。食事も私との関係性を悪くしないようにという外交手段だろう。
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