不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「翠は納得してるんでしょ?豪と結婚すること」
「まあ、納得はしてるけど」
「けど?」

聞き返され詰まった。

「選べなかったから無理やり納得したのかもはしれない。それは豪も一緒。斎賀の一族に生まれた中でも、私と豪はとびきりタイミングが悪かったんだわ」
「それじゃさ、豪が婚約を破棄したいって言ったらどうする?」

思わぬことを言われて私は押し黙った。
豪が、私と婚約破棄したい?

「豪が言ったの?」
「違う違う、たとえ話。ほら、家の事情は重いけど、豪は一応宗家の跡取りだろ?豪がどうしても嫌だって言えば、翠の人生は自由にはなるんじゃない?」

できるかできないかでいえば、わからない。
斎賀の力は強大だ。当主の豪のおじいさんもまだまだ健康だし、自分の思う通りにことを運ばせたい人だから、簡単に了承するとは思えない。

一方で、可能かもしれないとも思う。
私も豪も仕方ないと納得してきたけれど、お互いがどうしても嫌なら離れることは不可能ではないはずだ。

「考えたことなかった」
「それは考えなくてもよかった、ってことなんじゃない?」

祭が意味深に笑う。

「翠は案外、この許嫁関係に満足してるんだよ。それは豪も同じ」

そんなことはない。私は豪の傲慢で冷たいところは嫌いだし、偉そうに私を叱るところも嫌い。
そりゃ、たまに優しいし、この前なんか身を呈して助けてくれたし……。
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