不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
豪がきょとんと私を見つめる。

「っていうか、私と豪は対等なの。本家と分家っていう上下はあるけど、私は気持ちの上であんたに負けたことなんか一度もないわ」
「……成績」
「それだって中学から平らに均したら、私もあんたも祭もほぼ大差ないわよ!」

私はイライラと言って、隣に座る豪を下から覗き込む。

「だーかーらー!私をあんたの『お仕事リスト』に入れるのはやめて。妻になろうが、斎賀本家の跡取りを産もうが、私は豪の世話になんかならなくて平気!」

上手く伝わっている自信はない。でも、私はあんたの重荷になりたくない。
ヒーローに守られ幸せそうに笑う、何も知らないお花畑のヒロインでいたくない。

豪がふっと微笑んだ。嬉しそうな、零れるような笑顔だ。

「少しは隙を見せろ。好きな男には」
「ぶぇっ!?」

好きな男!?豪の言葉に反応しきれず、変な声が出てしまった。

「じっ自意識っ!過剰!なんじゃっない?」

怒鳴る私の顔を豪が捉えた。肩を掴まれ引き寄せられる。
間近にあるのは豪の顔。

「まあ、そういうおまえが好きではある」

豪の言葉が終わるか終わらないかで私たちの唇は重なっていた。

柔らかく触れ合う唇。あったかくて、優しい感触。
嘘でしょ。出会って12年目のファーストキスだ。
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