不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「ご、ごう」

唇が離れると豪が私を見つめていた。いつもこ豪なのに、瞳が優しい。
きっと、この表情は私しか見たことがないだろう。確信を持って思う。

「甘い。ケーキ味のキスだ」
「うるさ……」

豪がグラスを取り、シャンパンをごくりとひと口飲み込む。

「次はシャンパン味にしよう」

言うなり再び口付けられた。今度は強引に舌を差し込まれる。うめく暇もない。私は豪に抱き寄せられ、深いキスに翻弄される。
何分経っただろう。唇だけ解放され、私は息も絶え絶えだった。身体はまだ豪に抱き寄せられたままだ。

「いきなりすぎ。強引すぎ」

文句を言ってみたけど、か弱い声になってしまった。驚いた。そしてめちゃくちゃドキドキした。豪とキスをしてしまった。

すると豪がそろりと私から腕を外す。ん?終わり?と思ってこの先まで期待していた自分に気づいた。恥ずかしい。
見れば豪も赤い顔をしている。

「今日はここまで。結納の日取りも決めずにおまえを孕ませたら、じいさんも親父も猛さんもガチギレだろうし」
「はっはらっ……!」

とんでもないことを言われて私はソファから飛びすさってしまった。確かに一瞬期待したけど、それは豪も同じだったってこと!?
< 149 / 180 >

この作品をシェア

pagetop