不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「挑発?俺はした覚えがない」

しれっと言う豪は本当にバカだ。
私と豪は幸せで、そして年明けに結納は本当のこと。だけど、いちいち自慢する?
私たちは結婚に向けて動き始めてはいる。
式はもう何年か先にするのは、ふたりで決めた。私も豪も今は特務局の仕事をメインで考えたい。たぶん結婚自体は30歳頃、子作りは35歳頃までにチャレンジになると思う。

当然、豪のおじいさまは怒ってるわけだけど、豪は私と決めたことだからと突っぱねているみたい。
斎賀の跡取りを早く作らせたいあまり、豪に愛人を作れとまで言ったそうだから、この先もちょっかいは出されそうだなぁ。一筋縄でいくとは私も思ってないけど。

私たちの関係はこの斎賀という因習によって結ばれたわけだけど、そこに愛情を生じさせたのは私と豪だ。だから、愛の分野に関して誰かの指図は受けない。ふたりでそう決めた。

でも……。

「豪、やっぱり子どもはもう少し早く欲しいとかさぁ、あったら言ってね」

メトロの改札階に降りながら言うと豪が驚いた顔をする。

「昼から積極的なことを脈絡なく言うな、翠」

そうね、私の頭の中だけで考えてたから、いきなり口にしたら脈絡ないわよね。
私は急に恥ずかしくなって頭を掻きながら弁解する。

「いやさぁ、私の意見ばっかり尊重してくれるからさ。そういう要望は相談して調整していきたいじゃない?」

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