不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「豪、恥ずかしいよ」
「あんまり焦らさないでくれ。バスルームで抱いてしまいそうだ」
「そもそも、一緒にシャワーをやめればいいことでしょうが〜」

困って半泣きの私の腕を引くとバスタオルがはらりと落ちた。もうヤケだ。私は片手で下着を脱ぐとそのままバスルームに飛び込んだ。
豪が私の身体を上から下まで眺めて言う。

「綺麗だ」
「まじまじ見ないで」

そこではっと気づいた。
豪は先週肋骨を折ったばかりじゃないか!

「待って!豪!アバラは?ヒビは?」

豪も思い出したように、あーと頷いた。それから私の手を捕まえ、自身の左胸の下あたりを触らせる。それだけで私はドキドキしてるんだけど。

「このへん。身体捻るのと、左手一本で身体支えるのはキツイけど、他はだいたい平気」
「思ったより腫れたりしてないのね」

それに包帯も何もしてない。こんなものなのだろうか。

「ヒビだけだしな。折れてズレてりゃ、コルセットだとか入院だとか、下手すりゃ手術……」
「ひぇ、大事じゃない」

シャワーの水音の中、私はそっと豪の胸に顔を埋め裸の身体を豪の身体に押し付けた。右手で豪の怪我したあたりを撫でる。

「私のためにごめん。ありがとう」
「おまえの前でカッコつけたかっただけだ。気にするな」

豪が私の背をさする。それは性的な触り方じゃなくて、子猫をあやすような優しい触れ方。
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