不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「後ろ暗いところって?長親も袖の下をもらってたの?」
「イベント会場建設を任された建設会社の営業部に娘婿がいるんだそうだ。娘婿はこの仕事を裏で手引きした功労で課長に昇進。最初は長親も娘夫婦のために便宜を計らせてしまったと困惑していたそうだ。しかし、実は長親と娘婿の知らないところで鬼澤と建設会社上層部では莫大な金が動いていた」

ふうんと翠は頷く。

「それに気づいた娘婿が本件のチームを抜けたいと言ったところ、邪魔になったんだろうな。地方支社に転勤になり、事実上の降格」
「うわ」
「時を同じくして長親は鬼澤の有印私文書偽証罪を被って懲戒免職。鬼澤は長親に支払われない退職金分の保証は約束したものの、知りすぎた部下を野放しにしないように監視をつけた。『事実がバレれば、手引きしたおまえもただでは済まない』と釘も刺していたみたいだ」

不快そうに翠がため息をついた。

「金を受け取ってるのは鬼澤で、長親は当初知らなかったんでしょう?」
「でも、途中から知っていながら黙認していた。人が良いのにつけこまれてるな。長親は罪悪感もあり受け入れたが、娘婿が鬱病を発症し休職となったことに責任を感じたそうだ。どうにか鬼澤の罪を暴いて、これ以上自分のような部下を増やさないでほしいと言っている」
「は~、あのおじさん、本当にお人好しね。自分より周りのことばっかり」
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