不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「豪、おまえがしっかり翠嬢をリードし導いてやっていないんじゃないか?女子どもを養えて、男は初めて一人前というものだ」

おじいさまの男性論もやっぱり古い。そういう世代なんだとは思うけれど、男性ひとりに頑張れを押し付けるのって、ちょっと違うでしょう。

ああ、言い返しちゃいそう。女の幸福を勝手に決めないでください、とかなんとか。絶対、険悪なムードになっちゃう言葉が喉の奥でムズムズしている。

あと、私は豪になんか導かれたくない。100歩譲って結婚はしてもいい。するしかないって覚悟してる。でも、それは対等な立場での婚姻でありたい。
そりゃ、私と豪には本家と分家という格差がすでにある。でも、人間としての能力的には、私は豪より劣っているつもりはない。豪主導で結婚するなんてまっぴらだ。

「おじいさん」

言われっぱなしの豪がやっと口を開く。

「翠さんは今の案件のバディでもあります。中学生からの長い付き合いですが、同じ目標に向けて協力し力を合わせるのは初めてです。今は俺たちにとって、とても大事な時期なんです。もう少し見守っていただけませんか」

豪は薄く微笑んで続ける。

「もちろん、翠さんに嫌われないよう努力もしなければなりませんね」

このタイミングだ。すかさず私も口を挟む。

「豪さんとお仕事できる今がとても幸せなんです。公私ともに支え合えるパートナーを目指して頑張りたいと思っています」
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