不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「朝比奈さんの立場になり替わろうなんて思ってないわ。結婚するのは朝比奈さんだってちゃんと理解してる。でも、今はまだフリーでいいのよね。斎賀くんと恋する時間は残されてるってことよね」

何を言っているのだろう。遊びでいい?期間限定でいい?豪と付き合うから見逃せって?
なんて傲慢で挑発的な態度だろう。

「彼が望むならいいんじゃないですか?」

何を言っても無駄よ。私には関係ない。どうでもいい。好き勝手にやってちょうだい。
こんな非常識で壊滅的に価値観の違う女を選ぶなら、豪の趣味は最悪だけど、私が心の中で見下せば済むことだもんね。

そうよ、豪が風間さんに本気で恋すればいいんだ。そして、翠とは結婚できない、俺は風間さんと結婚しますとかなんとか、おじいさまの前で言い張ればいいんだ。
そうすれば、分家の私はお役御免。晴れて無罪放免!

「朝比奈さんって懐が深いのね。理解あるわぁ」

褒められているのに、けなされているように感じるのは、私がひねくれてるから?ううん、この女の言葉に滲んでる。『女として格上の私に譲って当然よね。最後は返してあげるんだから』って余裕が!

「いちいち私に確認とらなくていいですよ。やりとりは豪とお願いします」

私は早々に話を切りあげ、オフィスに向かって歩みを進めた。
風間さんの視線が背中に貼りついているようで、廊下を曲がるまで気分が悪かった。

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