不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
「おはようございます、風間さん」

私は振り返るなり、頭を下げて挨拶した。
風間恋子は今日も『女』丸出しのスタイルで微笑んでいる。カールした長い髪はまとめもしない(絶対仕事中邪魔でしょ)。ボディラインを強調したスーツ(一世を風靡したボディコンかっつうの)。ピンヒール(職場ではく価値観がわからない)。オフィスにはきつそうな香水の香り(頭が痛くなるくらい甘ったるい)。

あ~、もう出会った瞬間から今の今まで、気の合うところが一ミリも見つけられない人~。キャラ違い過ぎて苦手~!

「ねえ、朝比奈さん、ほんの五分ほどいい?」

風間さんは手招きして、廊下の隅に私を連れて行く。なんだろう、面倒くさい。いや、どうせ豪がらみでしょ?はあ、やっぱり面倒くさい。

「あのね、斎賀くんと金曜に食事に行っていいかしら?」

開口一番の質問に私は狼狽した。そりゃ、なんとなく豪のことかなと思っていたけれど、ストレートな言葉に驚いたのだ。

「お、お好きにどうぞ。私に断ることではないです」

答えながら、豪が彼女を改めて誘ったのだと思うと気分が暗くなる。食事に行くことが確定だから、私に牽制してきてるんでしょう?
豪も『食事はいずれ』とかなんとか断っておいて、随分早い『いずれ』だ。

「ありがとう。私ね、斎賀くんと付き合ってみたいって思ってるの」

風間さんはぬけぬけと言う。私の顔色を窺う気なんてゼロの様子だ。
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