彼女のセカンドライフ
あの時は、息子のことしか頭になかったから。
母親としての気持ち。
――はっ!! それがさっきの武尊君のお母様の気持ち⁉
なら今自分の胸がこんなに苦しいのはなぜ⁉
「武尊を思う気持ち」
それだけだった。
病室から追い返した武尊もきっと、同じ思いをしていたに違いないと、凪美子は思った。
「この胸の痛みは、失恋に似てる……」
凪美子は改めて、自分が武尊を好きだったことを思い知らされた。
その彼が、今病と闘っている。
笑顔で自分に別れを告げた、武尊の気持ちを思うと、胸が押し潰されそうなほど痛い。
「武尊に会いたい!」
でも武尊の母の気持ちも痛いほど分かる。
心が葛藤する。
俯いたまま立ち尽くす凪美子。
孝太郎は、そんな母を、見守る事しか出来なかった。