彼女のセカンドライフ

「お袋! 自分の意見を押し付けるような言い方するなよな! そんな言い方されたら誰だって、施設へ行ってほしいんだなって思うじゃないか!」

兄は武尊の微妙な表情を逃さなかった。

「何も私は」

「そうよ、母さん、こんな時に、家族が傍にいてやらないと、母さんが無理なら私が毎日家に来るから!」

姉も武尊の気持ちに気付いていた。

「そうだ、部屋は上なんだし、そんな忙しくもない店だ! 何もお前だけに付きっ切りで看病しろなんて言ってない!」

あれだけ、無関心で、蚊帳の外だった父が、初めて寄り添った言葉を言った。

「私はそんなつもりで! ただ武尊にとって一番いい環境を」

母が言おうとすると、

「武尊が決めることだ!」 

兄が声を張った。

父も姉も、同じ思いだという顔をしていた。

母は、自分の気持ちが、上手く表現できないことに苦しむ。

気を使ったつもりが、いつも反対に取られ、誤解される。

説明をするのが、下手な人だった。

それでもみんなの負担になりたくないと、武尊はホスピスを選んだ。

そして病院を移った。


「僕は大丈夫だから」


一言残して。

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