God bless you!~第14話「森畑くん、と」
★★★右川カズミですが……付属野郎、森畑なんとか
次の日。
マックに、また居た。
野郎が。
向こうもゲッと言った。こっちこそ、だ。
あいつは、憎たらしい顔で近づいてくる。
「何でだろうな。粒みたいなスペックなのに、何で見つけちゃうんだろ」
「何でだろうね。付属ってお坊ちゃんだよね?なのに買うのは100円マック。オゴってもくれない。どケチ。超軽量スペックごくろーさん」
あからさまに、対峙した。
無言で睨み合う。
「おまえ名前、何?」と唐突に訊かれたので、
「そっちが先に名乗れ」と言い返した。
「こないだスタバで沢村が紹介しただろ」
「どーでもいいのは忘れる事にしてますから。こっちは余計な事まで覚える余裕ないんです。先の見えてる付属とは違うんです」
「森畑!」
その勢いに対抗して、こっちも「右川!」と声を張り上げる。
その森畑が急に黙り込んだと思ったら、「あれ、その名前、どっかで聞いたことがある」とやけに気を持たせる。
「沢村から聞いたに決まってるじゃん。塾で一緒なんでしょ」
「うん。だよな。多分」と、森畑は不安定な納得に落ち着いた。
「あたし、オゴらないよ」
「貧乏人にはオゴってもらわなくて結構。つーか、その身長何ミリ?」
あたしは無視した。野郎は「腹立つワ」と、くる。
こっちの方が100倍ムカついてるよっ。
程なくして、フィレオフィッシュとサラダが飲み物と共にやってきた。
席に着くと、市原店長がやってきて、「今日に限りおまけね」と森畑にもコーヒーを出してくれる。森畑は「あ、どうも」と、愛嬌120パーセント、いつかの笑顔で頭を下げた。
大人にはいい顔するタイプ、と刻んでおく。
つーか、何の断りも無く、同じテーブルに来てんじゃねーよ。
だからというか、市原店長が、「あれ?こちら、例の彼氏だっけ?」と来てしまった。
ほらぁ!
「「違います!」」と、お互い、きっぱりと否定。
この感じ、どっか懐かしい。あたしは思わず、くすっと笑った。
市原店長が、「仲良くね。毎度」と意味ありげに言って、消える。
森畑はコーヒーを一口すすると、「あちっ!」と大袈裟に訴えて、仕切りと手のひらをこすった。
「熱い?そうでもないけど」
あたしは余裕で、ずるっとすする。
「つーか、例の彼氏って……おまえさ、勝手な妄想にオトナを巻き込むなよ」
あたしがバーガーの分解を始めると、見る見るうちに森畑は、苦笑いから唖然と切り変わる。
「何だそれ」
「何って何が?」
あ、これ?
フィレオ分解。フィッシュは細かくツブしてサラダ&マヨネーズでタルタルソース。パンで押えたら、出来るだけぺちゃんこに潰す、潰す、潰す。
「シビレるな」
森畑は呆然とその手作業を眺めた。
「こうすると片手で食べ易いの。さらに、フィレオがヘルシーに進化するんだよ~ん」
森畑は、もう我慢ができないと、笑い出す。
「おまえと沢村じゃ、どう見ても、お笑いだ」
ゲラゲラと止まらない。笑い過ぎ。
「うるさいな。もうこっちは散々言われ慣れてます。そういう事」
「どう見てもあいつの趣味じゃないって。そういう事する女は」
「だーかーらー、それも散々言われてますから」
それがイヤなら沢村だって最初から付き合ったりしないだろう。
そこでサラダがちょっと飛び出た。トレイの外から下まで落っこちたけど、3秒ルール、すぐ拾ったら土も何も付いていない。食べられる。ぱく。
「沢村の前でも、平気でそういうことできる?」
「いつも普通にやってるよ」
「あいつ、それ見てどんな感じ」
「最高に目つき悪いでーす♪」
「でしょうね」と、森畑は鼻で笑って、「それでおまえ平気なの」
「んー平気だね」
「あいつが好きなんだろ?ちったー寄せて、気に入られるコになりたいとか思わない?」
最近は……別の意味で思わなくもないな。
と考えただけで、特に返事はしなかった。
「マイ・ワールド全開だな」と、森畑は真剣に感心している様子だ。
レタスを頬張りながら、「あんたって、彼女とかいんの?」と話題を向こうに飛ばす。
「いる。働いている。OL。年上の」と、どこか誇らしそうに響いた。
ちょっと心が動く。
OLさん。
このチャンスに絶対聞いてみたい。
「どんな仕事?」
サラダがまだ口にあったけど、思わず身を乗り出してまで訊ねた。
森畑は、こっちの意外な食い付きに驚いたのか、飲みかけのコーヒーを危うく吹く所である。
「え?ああ、普通の事務だよ。保険会社で」
どんな服着てるの?お化粧は?カバンは?サイフは?手帳は?美人?髪型は?普段どんな雑誌読んでるの?どんな音楽聴いてるの?何食べたらイケてるOLになれる?どんな彼氏がいるの?
「って、それは聞いてもムダだからいいや。夢が壊れる」
あたしの勢いに多少戸惑いながらも、森畑は聞かれるままに答えた。
最後の質問には、「年下でも結構なステータスだろ。オレ、一応、星和だぜ」とくる。天狗が過ぎて、お釣りがくるよ。
聞けば、彼女は独り暮らしだと言うから。
「いいじゃん!」
「まぁ、ヤる場所には金かからないよな」
「とかいって、家賃もなんも全部その彼女でしょ。あんたスカスカじゃん。文句言えんの」
それには、ウッと詰まっていた。
「あんたじゃなくてさ、今度はその彼女を連れてきてよ。そしたらあたし、何でもオゴっちゃうよ」
「腹立つワ」
森畑は唸った。
その家賃は?インテリアは?お給料は?休みの日はどうしてるの?お昼はお弁当?自分で作るの?日曜日は何処かで外食?彼ごはんって……そこまで言った時、「オレが肉好きだからさ、色々作ってくれんだよ」と、森畑が先回りした。「あんたの好みは聞いてないから」と、ブスリ。
「何かどっかの雑貨ショップで、でっけー観葉植物とか買ってさ。いつもα波のCD掛けて、ベッドではアロマ。お風呂はバスソルト。ハーブ・ティーは無農薬。まるで癒しの攻撃だろ?」
それを聞いたら、ため息が出た。
「もうそれ、すっげー憧れる。あたし、そういう生活がしたいんだよっ」
付属野郎、森畑なんとか。
出会って初めて、嫌味のない笑顔を見せた。
< 6 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop