エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
「あんなに自信がなさそうに縮こまっていたくせに……。一体どこでそんな強さを手に入れたの? 入れ替わりを望んだのは私の方なのに、多くをつかんだのはあなたのほうだわ」
けれどベリルは首を振った。
「私は何も手に入れてはいないわ。だって私はシンディ姉さまじゃないもの。姉さまの顔で手に入れたものは、幻と同じよ」
「……ベリル」
「ようやく自分たちに戻ったんだもの。本当に欲しいものがあるなら、私たち、もう一度自分の手で掴まなきゃならないのよ」
シンディに言い聞かせながら、ベリルは自分がこんな言葉を紡げることに驚いていた。
ずっと姉に対して劣等感を持ち続けてきたのは、他ならぬ自分だ。
決して自分を見てくれる人はいないと思い込み、告白する気さえない弱い気持ちを持て余して。
なのに今は……弱った姉を前にしてどうして言いたいことが言えるのだろう。
姉よりも冴えないベリルの顔に戻ってしまったというのに。
『君には本当の自分の姿で会いたい。もちろん、君も本当の君の姿で』
ローガンの言葉が思い浮かび、全身が発火したかのように熱くなる。
ベリルに強さをくれたのは、彼だ。
ベリルそのものを彼が望んでくれたから、自分に戻れてうれしいと思える。
入れ替わっていた間に起こったことをうまく収束させることは、おそらく難しいだろう。
だけど、これでやっと自分の姿で彼の前に立てる。そう思ったら心は奮い立った。