エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~

 王妃様との顔合わせが終わると、さっそく勉強の時間が始まる。
ベリルにとっては、一室で学問に集中するほうが、社交に興じるよりも得意だ。
午前中いっぱい、文句も言わず机にかじりついていたベリルに、教師は「シンディ様は素晴らしく勉強家ですな」と感嘆の声を上げ、王妃をことのほか喜ばせた。

「昼食は王妃様と王太子様とご一緒にとのことです」

「はい」

むしろ苦痛なのはこの昼食会だ。ここで粗相をして、ローガン王子に嫌われた方がいっそマシだと思えてしまう。
ベリルが室内に入ると、既に王妃は席に座っていた。
ローガン王子は少しばかり遅れるということで、ふたりは飲み物をいただきながら待つことにした。

「実はね。最近、ローガンは少し様子が変なのよ。内緒の話ですけど、少し前に王城に賊が進入したのです。警備は万全だから、きっと誰か内通者がいたに違いないわ。ローガンはその賊と直接対面して、怪我をしてしまったの。それ以来、妙に快活で……無理に明るくしているようにも思えるの。あなたという伴侶を得れば、きっと心も安定するんじゃないかしら」

「王妃様……、その賊はどうなったんですか?」
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