先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

眼鏡を取り涙を乱暴に拭き、上を向かせて目を合わせると、真っ直ぐ俺を見つめた瞳が不安そうに揺らぐ。
そんな花笑に言い聞かせるようにゆっくりと話し出す。

「俺が好きなのは花笑、お前だ。どんなに他に女が寄ってこようと関係ない。俺が心底惚れてんのはお前だけなんだよ。…だから、そんな不安そうな顔するな。」

「航さん、私…」

堪えきれずに顔を歪ませる花笑を強く抱きしめた。

「不安も不満も、俺にぶつけろ。最近の花笑は我慢しすぎなんだ。昔みたいに思ったことは何でもすぐ俺に言え」

昔は言いたいことは直ぐに言っていた。拗ねたり怒ったり、そんな花笑も可愛いと思っていたが、最近は何も言わず暗い顔をしてばかりできっとかなり溜め込んでいただろう。

「…航さん、私自信がなくて不安だったの。たくさんの人たちが航さんに好意を寄せていて、いつかもっと素敵な人が現れて、私捨てられるかもなんて思って苦しくて…ううっ」

自信が無いなんてどの口が言うんだか。こんなに俺を夢中にさせといて…。

「馬鹿だな、そんなわけあるか。何があってもお前を離さねぇよ。」

顎を掬い、じっと涙目を見つめながら唇を寄せる。

「花笑、愛してる。世界中の誰よりも…」

キスをした後少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに微笑み見つめてくるこの瞳が好きだ。
愛しくて仕方がない。
自信を持って堂々と俺の隣で笑っていて欲しい…。

再び強く抱き締め腕の中に閉じ込めた。
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