先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「ふん、花笑のどこがいいんだね?」
「やだ、お父さん。自分の娘を卑下する言い方!」
お義母さんが窘めるが、俺は花笑を見つめながら答えた。
「この笑顔に癒されます。一緒に居ると落ち着き満たされる…。もうなくてはならない存在です。」
花笑が俺の手を両手で握る。その手を握り返し見つめ合い微笑む。
「そうか・・・」
腕を組み納得しているのかどうなのか読み取れない顔をして目を瞑るお義父さん。
「花笑はどうなの?」
お義母さんがついでと言わんばかりに花笑に聞く。
「私は、ずっと航さんが好きだった…今一緒にいることが出来てとっても幸せなの。結婚するなら航さんしか考えられない。」
握った手に力を込め、真剣な顔で言う花笑の横顔を見つめる。その姿を見てお義父さんはため息をついた。
「…花笑の幸せは、名前の通りいつも笑顔でいることだ。泣かせるような事はしないな?」
お義父さんが射抜くような鋭い目で俺を見つめる。
今まで泣かせてきたことは、…言わないでおこう…。
「…もちろんです。」
これからは絶対泣かせない。決意新たに真剣な顔で頷く。
お義父さんがふぅーっと大きなため息をついて、ソファーに預けていた背を起こしこちらを見据える。
「娘を、よろしく頼む。」
ひと言言って頭を下げたお義父さん。
その言葉に安堵と共に嬉しさがこみ上げる。
「…ありがとうございます。必ず、幸せにします」
「お父さんありがとう…」
お礼を言い頭を下げ、涙目の花笑と微笑み合った。