先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

あなたは誰のもの?


「うちのお風呂は檜でできてるのよ!自慢だから是非入って!」

ということで、恐縮しながらも入ったお風呂は檜のいい匂いがしてとても癒された。
いつもの眼鏡姿に戻りパジャマの上にカーディガンを羽織って荷物を持って階段を上がった。
3階建てのお店の2階3階が住宅で、3階に航さんと海斗さんの部屋があり、今日は一人暮らしするため出ていった時そのままにしてあるという航さんの部屋に泊まる。
3階の奥の扉が航さんの部屋。
一応コンコンとノックをしたら「どうぞ」と声がした。
そっと開けると、8畳ほどの広さにベッドと机と本棚、と大きめの家具はそれだけ。あまり物が少ないようでスッキリした部屋だった。
電気も付けず窓を開け、出窓に腰掛けて外を見ている航さん。

「航さん、いくら今日は暖かいとはいえ夜は冷えるよ。風邪引いちゃう。」

声をかけると気だるそうにこっちを見る航さんが凄く色っぽくてドキッとした。

「ああ、酔いざましだ。さすがに酔っぱらった…」

「ふふっいっぱい飲まされてたもんね。」

そう言って電気をつけようとスイッチを探していたら、「花笑、そのまま。おいで。」と航さんに呼ばれ、荷物を置いて傍まで寄ると私の腰に腕を回し手を組んでちょうど同じ視線で見つめられる。

「この景色を花笑に見せたかったんだ…」

そう言って外を見る航さんに続いて外を見ると、商店街の裏手でひっそりとしていて近隣はあまり高い建物が無く、空と海の境目もわからない漆黒の中に月明かりできらめく波が広がっていた。
心地よい波の音が聞こえる。

「今日は満月なんだね。月明かりに照らされて波がきれい…」

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