先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「俺、この店継ぐことになったんだ!これからたくさん修行して父さんみたいな寿司職人になる!見てろよ、この店を日本一の寿司屋にするから!」

「わあ!海斗すごーい!じゃあ海斗が立派なお寿司やさんになれるか私ちゃんと見ててあげるよ!」

子供の大それた宣言をニコニコ笑って喜んでくれた雅美をはっきり好きだと自覚した瞬間だった。

「でも航兄さんは?どうなるの?この家からいなくなちゃったら嫌だな…」

そして、雅美は兄貴が好きなんだとわかった瞬間でもあった…。

あれから十数年、俺は親父の元で修行してお客さんに寿司も出せるようになった。
雅美は相変わらず兄貴のことが好きで、付き合った男もいるみたいだけど、兄貴が帰って来ると必ず会いに来ていた。
俺はというと、中学に上がる頃から航の弟という有り難いような有り難く無いようなレッテルを貼られ、容姿も良かったからモテた。
雅美とは相変わらずな付き合いで店も手伝ったりしてくれてたけど、兄貴が帰って来た時の雅美の表情を見ると気になりながらもこの関係を変える勇気が無かった。

そんな事もお見通しの兄貴は俺を煽り、さんざん花笑さんとの仲を見せつけてきた。
兄貴なりの発破のかけ方だとわかってる。
今度は俺の番だ…。
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