先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「俺、…やる。やりたい!料理好きだし、父さんの寿司もこの店もすきだ!俺も寿司握りたい!」

「…わかった。航はそれでいいんだな?」

「うん。俺はかまわない。俺は俺の進みたい道を行く。この家は海斗に任せる」

「じゃあ海斗、明日から店の手伝いさせるぞ。遊んでる暇はないぞ。いいな?」

「うんっ!」

「母さんもいいよな?」

ずっと黙って見守っていた母さん。
涙目になっていてそれを指先で拭い笑った。

「うん、うん、海斗がそこまで言うなんて母さん嬉しい。航もちゃんと将来のこと考えて…。あなた達はお父さんとお母さんの自慢の息子だわ!ね、お父さん」

「ああ、そうだな」

今思うと理解ある両親で良かった。
兄貴は店を継がなきゃいけないプレッシャーから解放されて、タガが外れたように遊んでいた。
店は手伝ってたけど…。

俺は店を継ぐことになって嬉しくて雅美を呼んだ。
いつものように創作料理を出す。
始めて作った手毬寿司。
父さんにお遊びだけど初めて教わった、子供でも簡単に作れる寿司だ。
俺なりに見た目を駆使して出来上がった自信作。
それを見た雅美は「わあ!きれい!」と喜んでくれた。

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