【完】さつきあめ
凜が苦笑する。
わたしはぶんぶんと首を横に振った。
人を好きになる気持ちを馬鹿にするつもりは毛頭ない。
「あたしは少し、凜さんの気持ちがわかります…」
「あたしの気持ち?」
「好きな人の為に頑張りたいって気持ち、全然悪くない事だなって」
わたしの言葉に、凜は口元に笑みを浮かべる。
「ねぇ、たまには飲みにいかない?」
「あ、はい」
「若い良い男がやってるバーがあるんだけど」
「もぉ、凛さんは若い男が好きだなぁ…。男の趣味悪そう…」
2人顔を見合わせて笑う。
凛と出会った時は、美優から聞いてた通り怖かったし、仲良くなれる事はないと思っていた。
でもこの人の仕事の考え方や、自分と少し似ている部分があって、いつの間にか怖いという感情は消えていった。
凜が連れてきたバーは、いわゆるボーイズバー的なもので
ホストを軽くしたバージョン。
ホストなんかテレビで見た事がないけれど、大きくはない店内でホストよりもちょっとラフな感じな若い男の子が何人か忙しそうに動いていた。
客層は見るからに夜の仕事をしているような感じの女の子ばかりで埋め尽くされている。
「こんばんは、遥です。よろしくね~!」
わたしたちはソファー席に座り、凜の言う通り若い遥という男の子が1人、わたしたちの前にある丸椅子に座った。遥はどことなく幼くて、原田に似ていた。