【完】さつきあめ
「ごめんなさい」
「ゆい?!止めてよ!」
無理やり顔を上げさせると、ゆいの笑顔が少しずつ崩れていく。
唇を噛みしめながら、目の淵を真っ赤にする。今にも泣きだしそうだったけど、無理やり笑顔を作ろうとした。
「無理に、笑わなくていいよ」
そう言うと、ゆいの目からぽろりと涙がこぼれた。
「本当にごめんなさい。
あの日もあたしを助けにきてくれて、ありがとう。
あたしね、いざとなったら原田も助けにきてくれなかったし、遊んでた男だって助けにきてくれなかった。結局そんな薄っぺらい人間関係しか築けてなかったの…。
お客さんにしても、どっか馬鹿にした態度とってたと思う。
昔から女の子には嫌われるタイプだったから、別に友達なんか出来なくてもいいしって思ってた。だからさくらに優しくされた時は本当に嬉しかった…」
「ゆい…。
あたしはゆいの人懐っこいところ、すごく好きだったよ。出会ってすぐに仲良くできる雰囲気を作ってくれたもん」
「あたしがさくらに酷い事言っても、さくらはずっと優しかった。
そんなの馬鹿みたいって思ってた。
女の子が男のために必死になるのも心の中でずっと馬鹿にしてたけど…
本気で人に向き合わなかったら、自分の周りには結局何も残ってなかったんだなって思った…」
「でも…お店を辞めるって。
またいちから始めればいいじゃない…!」