【完】さつきあめ

「あたしも同感ね」

ボックスの席で、美優とはるながトリガーのキャストに絡んでいる。
絡まれてる男の子は少し困った顔をして、お酒を一気する。
グラスを手に取り、わたしの隣に座る綾乃が、煙草に火をつけながら、わたしの顔を見る。
いつもの綾乃だ。
あの時のように感情的ではない。

「わたしと光と朝日の事は美優やはるなだけには言ったの。ごめんね、勝手ばっかして。
あの子たち、何も言わないと思うけど、さくらは光のところへ行った方がいいと思うよ」

「綾乃ちゃん…」

綾乃までそんな事を言う。

「七色グループなら大丈夫よ。朝日は自分1人でここまでグループを大きくしてきた人なの。
こんな事でへこたれるような奴じゃない。それに深海さんたちや頼れる人が沢山いる。
朝日自身は気づいちゃいないだろうけど、それが何年も経営者としてやってきた朝日の力なの」

「わかってる、そんなのわかってる…。」

「光が七色からあんな強引に独立をしたのは、さくらの為なのよ」

「…でもあたしは光にこんな事を望んではいなかったの」

「そうする事しか光には出来なかったのよ…」

「ねぇ、綾乃ちゃん。さくらさん…さくらさんは朝日と光、どちらが好きだったの?」

これはいつか由真にも聞いた事だった。
由真はわからないと言った。他人の気持ちなんて。さくらの気持ちはさくらにしかわからないと。

さくらさんの名前を出すと、綾乃は困ったように眉毛を下げた。

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