【完】さつきあめ
1番と2番の差は明らかに開いたまま。
ここまで圧倒的に差をつけられるなら、1番にならなければ2番だろうが最下位だろうが同じなのではないかと思ってしまう。

「売り上げの差が比べ物にならないけどね」

「でもナンバー2とナンバー3の売り上げの差もすごいもんだけどね」

「それでも1番じゃなきゃ意味がない」

「そのくらいの勢いがなきゃな。
正直言うとさくらはもう辞めちまうと思ったけど…」

高橋は光の事を言わなかった。
光の名前さえ口に出さない。
それでも彼はこの1年半、わたしと共にこの夜の仕事をしてきて、それと同じくらい今は朝日からの信頼も厚くなってきた。

正直小林よりも、お店の事をよく見ていて、実質お店を回しているのが副店長の高橋なのだとも思う。
そして彼自身もいつかそうなりたいと思っているのだろう。
わたしと本当に一緒に働きたいのか、それともわたしを踏み台にしたいだけなのかは実際わからない。
正直そんな事はどうでもいい。

ここのところ毎日同伴をこなし、アフターをする生活を送っている。
家で食事をとる事は滅多になくなり、プライベートの時間さえ更に仕事につぎこんだ。
何かを必死に忘れるように。

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