【完】さつきあめ
その日は早く帰ってきたにも関わらずあまり眠れなかった。
ベランダから夜のネオンを見下ろして、切ない気持ちがこみあげてくる。
結局寝たのは明け方すぎだった。
朝からお風呂に入り、入念に髪を巻いて、お気に入りのワンピースを着る。
初めて光と遊びに行った日も美優にショッピングに付き合ってもらったっけ、なんだかすごく昔の事みたいに感じる。
1年以上過ぎた。
身に着ける物の値段も変わったし、住む場所も変わった。
でも今日はあの悲しかった日から1度もつけていなかった、光からもらった羽根のネックレスとピンキーリングをつけた。
昼の光りを浴びて、首元がきらりと光る。
わたしはクローゼットの奥にずっとしまっておいたある物を取り出した。
「おはよう」
もう昼だというのにおはようと言う光が少しおかしくて、笑う。
自然に車に乗り込むと、ふわりと光の香りが車内の狭い空間で香る。
大好きだった、海の匂い。
「おはよう、光」
「夕陽は夜に見るより昼間に見る方がずっと綺麗だな」
「まぁたー…うまい事言う…」
「マジで」
ドリンクホルダーの中に飲み物が入っていた。
それもあの時と同じ。
わたしはそれを手に取り、両手で持ってその温かさを感じていた。
あの時もその月に売り出していた桃の冷たいフラペチーノだった。けど今日は新商品のイチゴのショートケーキ味のホットだった。