【完】さつきあめ
仕事中のおちゃらけているお調子者の光。
社長としての厳しい顔を見せた光。
楽しそうにはしゃぐ光。
どの光が本当の光だっただろうか。そのどれもがもしかすると本当の光ではなかったのかもしれない。わたしは光のほんの一部しか知らない。その人のすべてを知りたいと思うのが、恋だというのなら……わたしは……。

夜のパレードが始まって

花火が打ちあがる。

色とりどりのきらきらと光るライトアップされた光景。
夜のネオンよりずっと大きくて、ずっと綺麗で、純粋で優しいものばかり目に入る。

言葉も出ずにぼーっとそれを眺めていると、光の手がわたしの手と重なる。

「綺麗だなー」

「本当に綺麗…。夢みたい…。って夢の国だもんね…
終わっちゃったら、魔法も解けちゃうんだね…」

「解けない魔法もあるよ」

そう言いながら光はにこりとわたしの顔を覗きこんできた。

耳を通り抜ける大きな音を立て、花火が上がる。

光はポケットから小さな箱を取り出し、わたしへ差し出した。

「え?!」

「今日はありがとう。俺のお願いを聞いてくれて」

そう言って、戸惑っているわたしの手の中に小さな箱を握らせる。
無言のまま、ピンク色のリボンをするすると解いていく。
中に入っていたのはネックレスだった。細いチェーンの中央には片方の羽根と羽根の下に淡い色のピンクの石がついていた。

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