何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
茶トラの仔猫は彼に懐く
「トラ子ー!」


私がそう叫ぶと、傍らにあったベンチの下から、トラの子猫がにゃーんと鳴きながら、軽快な足取りで私に近づいてきた。

思ったより近くにいたんだね。

トラ子は、私の足にスリスリと頬を擦り、鼻をひくひくさせている。

うろうろと、落ち着かない様子だ。


「待って待って、ちゃんとあげるから」


苦笑を浮かべて、私は通学リュックの中から、自宅のキッチンから持ち出した鰹節とにぼしが入った袋と、紙皿を取り出した。

そして紙皿の上に鰹節とにぼしを乗せて足元に置くと、勢いよくトラ子はがっつき始める。

学校近くの公園。登校時と下校時、私は必ずトラ子に会うことにしている。

もちろん、貢物を持って。まあ、気まぐれな猫なので、居ないこともあるけれど。

野良猫に餌をやるのは、あんまりよくないことなのだろう。

責任をもってちゃんと飼えないのなら、中途半端なことしてはならない。

しかし、高校入学直後に、親猫とはぐれてしまったトラ子をこの公園で見つけてしまい、どうしても放っておけなかった。

インターネットの里親募集サイトにトラ子の情報を載せてはいるが、なかなかいい反応はない。

高校一年生女子の私の財力じゃ、予防接種をしたり病気の検査をしたりといった、トラ子の健康を保証するのが無理だから……という点も大きいかもしれない。
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