何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
お母さんに言えば助けてくれるかもしれないけど、母子家庭の私の家は、お金にそこまでの余裕は無い。


お母さんは私に不自由無くさせてくれはいるけれど、なんとなくそれくらいは分かる。


ーーというわけで、健康そうには見えるけど、医者からのお墨付きがないトラ子を、わざわざ自分の家に迎えるような奇特な人は見つからなそうで。先行きは暗いってわけ。

「ーーおいしかった?」


皿を舐めるようにきれいに食べたトラ子は、その場で満足げに毛繕いを始めた。



「猫っていいなあ……。ふわふわで、かわいくて」


何もしなくても、自由に好きに生きていても、可愛がられて、だいたいの人間に好かれて。

私にもそんな能力があればいいのにな。

残念ながら、私が持っているスキルは人を寄せつけない、鉄壁のガードですけどね。

ーー高校に入学して、2ヶ月。

既にクラスの中では、気の合う人同士のグループが組まれていて、なかなかそのメンバーが入れ替わることはない。

そして私はどこのグループにも属していない。

理由は二つ。一つ目は、私が入学式の当日にひどい風邪をひいてしまい、一週間も休んでしまったこと。
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