何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
だけど、相変わらず他のクラスメイトとは、打ち解けることが出来ていなかった。

前提として、みんな私のことを怖がっているから。だからどうしても会話をすることに腰が引けてしまう。


「……いいよ。もうみんな、仲良い子のグループできちゃってるし。別に、今のままで大丈夫だしね」


苦笑を浮かべて私は言う。すると中井くんは、困ったような顔をした。


「えー、でもさ。寂しくない?」

「…………」


ーー寂しいよ。

言ってしまいそうになった。だけどそんなことを中井くんに言ったところで、どうしようもない。私はギリギリのところで、堪えた。


「ーー心配してくれて、ありがと。でも一人でいるの嫌いじゃないんだ。慣れたしね、もう」

「そう? ちょっと話せば、絶対すぐ仲良くなれると思うんだけどなー。ほんとにもったいなくてさー」


ーー中井くんならね。そういう風にできるかもしれないけど。

みんなに避けられてる私は「ちょっと話す」ことだって、エベレストのようにハードルが高いんだよ。

そう思ったけど、そんな卑屈で後ろ向きな考え、真っ直ぐな彼には言えなくて。


「心配ご無用です」


私はぎこちなく笑って、そう言うことしかできなかった。中井くんは納得していないようだったけど、それ以上は何も言ってこなかった。
< 34 / 256 >

この作品をシェア

pagetop