【バレンタイン短編】同期から贈られたおまじないは、キス。

「崇生くん、異動らしいよ。地方支社に」
「え?」


朝一番、同期の由佳に耳打ちされた噂。
まだ水面下の情報らしく、確定ではないらしいけれど。


「私達の年齢で、地方支社の課長補佐だなんてほんと、出世頭だよねー。私達同期の誇り」
「う、うん」
「嬉しくないの? 史穂」
「え……嬉しいよ、もちろん!」


にっこりと笑って同期の由佳の質問に答える。
でも心の中はざわついている。

柳田崇生くん、同期で幼なじみ。
柳田くんが転校してきたのは中学生のときだから、幼なじみと称するのは微妙ではあるけれど。

中学を卒業したあとは高校もいっしょ。大学は違ったけれど、就職した会社がいっしょで、同じ部の配属になったのだから、腐れ縁と言ってもいい。

身長180センチオーバーの長身。
少し癖のある黒髪。
硬式テニスでインターハイ出場経験のあるスポーツマン。

初めて会った中学の入学式では柳田くんは幼顔で背だって私の方が高いくらいだったのに。
就活で再開したときは別人かと思うほど、スーツの似合う男性になっていた。

カッコいいとは思う。
口は悪いけど優しいところもあるし。
もっと言えば、高校時代、ちょっと憧れてたことも。テニス部創立以来の初のインターハイ出場に校内のみんなが色めき立っていたから。私もなんとなく。

でも、こう、なんか違う。
今、あの頃と同じ目で彼を見れない自分がいる。

同期なのに仕事ができて、時折頼ってしまったり。
そんな柳田くんが、転勤……だなんて。仕事上、ちょっと困る。

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