絶対領域
うるさいほど賑やかだが、周りにウザがる人はいない。
横断歩道には、学校帰りの私たち4人のみ。
……だったんだけど。
「萌奈のところと、あずきと慎士のところ、どっち先に……っ!!」
「翠?」
「ど、どうかした?」
不意に、背後に気配が出現した。
殺気が飛んできてようやく、せーちゃんとゆかりんもハッとなる。
一早く察知した私とみーくんは、振り返りざま、背後に迫る人物に蹴りを食らわせた。
「ははっ、勘がいいな」
パチ、パチ。
リズムの遅い拍手には、皮肉と敵意がたっぷりとこめられている。
「お、おっまえ……!」
せーちゃんは頭に血を上らせて、わなわなと身体を戦慄させた。
蹴りをかました拍子に離れた、手と手を、熱と冷気が侵食していく。
「よー、久しぶりだな、クソガキ」
拍手をやめた、目の前の男。
余裕ぶって口角を上げているが、ひと際殺伐としている。
こいつ……。
みーくんとの鬼ごっこの時も、路地で襲ってきた時も新人いびりをしていた、あの嫌な男だ。
リーダーの如く立っている目の前の男と同様に、新人いびりの際に見覚えのあるガラの悪い連中が、私たちの行く手を邪魔するように囲んでいる。
私とみーくんがそれぞれ蹴りを直撃させた奴らは、簡単に倒せた。
だが、敵サイドは、30人を超えている。