絶対領域





「あず兄がわざわざ1年の教室まで迎えに来なければ、もっと仲良くできるかもね」


「……出たよ、天然毒舌」


「え?」


「いや、なんでも」



なんか今悪口言ったでしょ。

ごまかされたってわかるんだから。


幼なじみ、なめないでよ。




「ねぇ、あず兄。何度も言ってるけどさ……」


「ダメだ」


「ちょっと!まだ本題、話してないでしょ!」



却下するの早すぎ!



「迎えに来なくていい、って言うんだろ?ダメ、絶対ダメだ」



ぐっ……バレてた。

しかも2回も「ダメ」って言われた!




「また“あの時”みたいにいなくなられたら……今度こそ、俺は……っ」



あず兄は言葉に詰まって、苦味を耐えるみたいに奥歯を食いしばった。


……ほんと、過保護なんだから。



「大丈夫。どこにも行かないよ」

どこにも、行けない。



だって、“あなた”がどこにいるか、わからないから。




< 40 / 627 >

この作品をシェア

pagetop