絶対領域
「あず兄がわざわざ1年の教室まで迎えに来なければ、もっと仲良くできるかもね」
「……出たよ、天然毒舌」
「え?」
「いや、なんでも」
なんか今悪口言ったでしょ。
ごまかされたってわかるんだから。
幼なじみ、なめないでよ。
「ねぇ、あず兄。何度も言ってるけどさ……」
「ダメだ」
「ちょっと!まだ本題、話してないでしょ!」
却下するの早すぎ!
「迎えに来なくていい、って言うんだろ?ダメ、絶対ダメだ」
ぐっ……バレてた。
しかも2回も「ダメ」って言われた!
「また“あの時”みたいにいなくなられたら……今度こそ、俺は……っ」
あず兄は言葉に詰まって、苦味を耐えるみたいに奥歯を食いしばった。
……ほんと、過保護なんだから。
「大丈夫。どこにも行かないよ」
どこにも、行けない。
だって、“あなた”がどこにいるか、わからないから。