絶対領域



いろんな感情の詰まった叱責が、だんだんと弱まっていった。


びしょ濡れの頬に、ためらいがちに触れる。



『なんで、そんな、ボロボロなんだよ……っ。髪なんか左だけ短くなって……ま、まさか、誰かに……』



オリを非難されてしまう気がして、咄嗟に首を横に振った。



この傷も、その傷も。

全部私が弱くて、頼りないせい。


オリとずっと一緒にいられると思い込んでいた、自惚れのせい。




糸が切れたように、力が尽きて座り込んだ。


せーちゃんは戸惑いながら、泣き崩れる私の背中をさすってくれた。



『ごめん、ごめんね……っ』



せーちゃんたちが心配してくれてたこと、ちゃんとわかってる。


いくら謝っても足りない。

たくさん迷惑をかけたし、不安にさせた。



でもね。

私はやっぱり、オリを忘れられない。


一緒に逃げたこと、微塵も後悔してないの。



傷ついたってよかった。


あなたのそばにいたかった。



それだけで、よかった。それで幸せだったんだ。



だけど、こうするしかなかった。


私が傷つく度に、あなたの心にも傷が刻まれてしまうから。



あなたの重荷に、なりたくなかったの。




私に魔法が使えたなら、よかったな。

そしたら、あなたの中から、私の記憶を消したのに。


そうすれば、あなたを蝕む傷痕が、少しは無かったことになるでしょう?



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