絶対領域



余儀なく遠ざかっていく意識の中。


横目にボヤけて見えた。



あの金色の目は。

あの学ランは。



あれは、やっぱり、“あいつ”だ。







「み、翠くん!バイク飛ばしす、ぎ……って、え?こ、これ、どういうこと?」


「俺が来た時にはもうこんなんなってて……っ、くそ!」


「……様子見する予定だったのだが」


「チッ、一歩遅かったか」




エンジン音が途絶えたかと思えば、聞き慣れた声がする。


頭がズキズキ痛んで、目を開けることも起き上がることもできやしない。



ここで対立を食い止めたくて、説得ができなくて……それで……。


それで。

この続きが、思い出せない。




「おい万!本当に萌奈はここにいるんだろうな!?」


「たぶんね。……あくまで推測、だから」


「あっ!なんでお前らもここにいるんだよ!」



あ、また知ってる声だ。



いきなり騒がしくなって目が冴える気がしたけど、逆に瞼が重たくなっていく。


激痛が大きく、強くひしめく。



近くに誰かがいるのがわかった。

でも、誰かはわからない。


居心地がいいのは、なんでかな。




「あ、あ、あそこにいるのって、ま、まさか……!?」


「総長!?」

「……ねぇ、ちゃ……?」



意識が堕ちていくにつれて、記憶も眠っていく。




私は、誰?

あなたは、誰?


私は……あなたは……。


あれ?なんだっけ。



もうわからないや。





片翼がもげたところから、紅の血にまみれていった。




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