絶対領域



今度は私が、みーくんに恩返しする番だ。



次はちゃんと守ってみせる。


後悔を後悔のまま終わらせない。



記憶を失ってもやり直せはしないのなら、全力で突っ走るしかない!




「みーくん、またあとでね」



パーマがかった前髪を優しく梳いてから、そっと丁寧に手を離した。



やらなければならないことがある。


下っ端同士の対立も最後はうやむやになって、きちんと解決できていない。



やっと予想ついた裏切り者にも、会いに行かなくちゃ。



おそらく、“あいつ”だ。

あの、金色の目をした――。




布団をかけ直し、みーくんの寝顔を見たあとで、802号室を去った。


静かに扉を閉めると、



「あれ?もういいの?」



ちょうどバンちゃんが廊下の奥から戻ってきた。


バンちゃんの後ろには、802号室前で警備していたオウサマとゆかりんもいる。



「えっ、も、萌奈さん!?」

びっくりしてるのは、ゆかりんだけ。


……やっぱりオウサマは気づいてたか。




「この街には、天使と悪魔がいる」


「え……?」



バンちゃんの茶色い瞳が、やや瞠られる。



「ヒント教えてくれてありがとね、バンちゃん」



さらに瞳が見開かれていった。



エレベーターで『会ってみたいなぁ』って独白してたけど、すぐそばにいたんだね。


あなたが“悪魔”で、私が“天使”だった。




「もしかして、記憶が……」


「うん、思い出したよ」



これにはバンちゃんとゆかりんだけでなく、さすがのオウサマも驚いてる様子だった。


こんなに早く記憶を取り戻せるなんてね。

嬉しい誤算だ。


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