平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「サクラはイアニスが好きなのか? 私よりも?」

 突然、突拍子もない事を聞かれて、桜子の目が点になる。

「す、好きじゃありませんっ! おふたりの仲を裂くだなんて、まったく思っていませんからっ!」

 プルプルと首を左右に振る桜子に、ディオンは小首を傾げる。

「私たちの仲は絶対に裂けないな。しかし、そなたが私よりもイアニスが好きなのであれば、私たちの仲は険悪になるかもしれない」
「言っている意味がわかりません。どうぞおふたりは今のまま仲良くなさってください」

 顔を近づけられ、桜子は引きつった笑顔を向ける。

 ディオンは超絶美形だけあって、触れられれば心臓を高鳴らせてしまうが、桜子はふたりの愛を認めている。

「困ったな……」

 ジリッと後退した桜子の顔の両横に、彼の腕が壁につけられる。

(か、壁ドン……?)

「な、なにが困ったのですか……? ディオンさまっ、か、顔が近いです」

 整った顔の細部までよくわかるほど、めちゃくちゃ近づけられて桜子は困る。

「本当に、そなたが倒れたときは心配したんだ」
「は、はあ……」

 また女ったらし癖が出てきたのかと考えながら、アメジスト色の瞳を見つめる。

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