平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「今の私はそなたが気になって仕方がない」
「き、気にかけてくださり、恐悦至極です……」

 古くさい言い方がディオンに伝わるのかわからないが、近づけられている人形のような顔にテンパる桜子だ。

「お礼を言う必要はない。私はサクラが好きだ。好きな人に喜んでもらいたい。幸せになってほしい。そう思うのは当たり前のこと」
「お礼は当然――えっ!? 今、なんて……?」

 ディオンはからかっているのだろうか?と、桜子は食い入るように彼を見る。

「サクラが好きだと言ったんだ」

 サラッと口にして微笑むディオンに、桜子は自分の耳を疑う。

「好き? 好きにも色々あるかと……」
「そうだな。私はこうしたい」

 そう言ったディオンはさらに顔を桜子に寄せて、唇に薄めの唇を当てた。キスをされた桜子は、心臓が一瞬だけ止まった。

 目は大きく見開かれ、食むように唇に触れてくるディオンを見つめるばかりだ。

(ど、どうして……?)

 驚く桜子は焦り過ぎて、ファーストキスなのだということよりも、ほんの少し伏せられた金色のまつ毛が長いなと思っていた。

「サクラ、キスしているときは目を閉じるものだ。まさか、サクラの世界では違うのか?」

 キスを止めたディオンは楽しそうな笑みを向けている。

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