平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「……ここでは簡単に人が死ぬんだと、ショックを受けました。でも、平気です。私、もっと強くなりたいです」
「えっ!?」

 ディオンの細められていた双眸が、驚きで見開く。

「馬にも乗れるようになって、ディオンさまの足を引っ張らないようになりたいです」
「サクラ……」

 桜子の言葉で、今まで苦労続きだったディオンのすさんだ心に温かいものが流れる。

 ディオンは桜子を抱きしめた。

「そなたはなんて素敵な子なんだ。力が湧いてくるようだ。神がそなたをよこしてくれた。私はサクラが好きだ」

 桜子の唇が、優しくディオンの唇に塞がれた。

 前にキスされたときと違い、もっと深く繋がる口づけに、桜子は戸惑いながらも応える。

 濃密なキスがやむと、恥ずかしくてディオンの顔が見られない状態だった。

「サクラ、そなたも私が好きだと思っていい?」

 桜子はコクッと頷く。

「よかった。そなたのことは私の命に代えてでも守る」
「……ディオンさまになにかあったら、私はこの世界で生きていられません」

 真っ赤になりながらそう口にした桜子を、ディオンは抱き上げた。

「きゃっ!」

 桜子はディオンの肩に手を置く。

 小さい頃に父親にされたような『高い高い』に近い抱き方だ。

「可愛すぎて、そなたをここで抱きそうだ」
「ディオンさまっ! お、下ろしてください。う、海の近くへ行きたいです」

 今まで異性と付き合ったことがなく、父親と教師以外は周りが女性ばかりで恋愛に疎い桜子は、困惑してしまった。

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